博物館資料のなかの『富士山』
葛飾北斎 冨嶽三十六景
6:青山円座松(あおやまえんざのまつ)
円座の松は、原宿村の龍巌寺境内にあった名木で、一抹の松が三間(約5.6m)にも枝を広げていたという。参詣者は寺の広い庭園を散策してこの松を鑑賞した。北斎は笠松を小山のような半円に描き、富士を極端に尖った大きな三角形であらわして対照させた。築山には松と富士を肴に酒宴が開かれている。父親が子どもを手ぬぐいで引っ張って坂を上る姿や、松葉からのぞく掃除する人の手など、細かい点景も面白い。